2011年11月12日土曜日

都市の悪魔



 この作品は「別冊新評」の表紙として1972年に描かれた。

 ネクタイを締めたサラリーマン風の男。彼の赤紫色の腕はシャツと同化し、その指には鋭い爪が見える。また、耳は尖りその頭には触覚のようなものがある。それらは彼が悪魔である事を示唆している。男は歌舞伎の見得のようなポーズをとっており、感情の昂りも感じとれる。
 背景のビル群は荒涼な大地に飲み込まれ、暗い空には不穏な空気が漂う。
 
 都市で働く人々は「悪魔」となってしまう可能性を秘めている。この作品はそれを危惧し、人々に警告しているのかもしれない。

 

1 件のコメント:

  1. タイトルにある「悪魔」を、鋭い爪、とがった耳、触角(顕在的属性)が発信していることを的確に捉えている。そうすると、もう一つの顕在的属性である「ネクタイを締めたサラリーマン風の男」とどう関連付くのか?両者は対比的に表現されているのか、それとも見かけの違いはまさに見せかけのことに過ぎないというメッセージが込められているのか? この作品も、顕在的属性からさまざまなイメージの膨らみが可能であり、もしこの作品の解説文が、一種類のイメージ方向だけで貫かれるとすれば、その解説に不満を抱く人がたくさんいるに違いない。

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