2011年11月12日土曜日

健康情報


「健康情報」



医師と対話する男性、老人夫婦と若い夫婦と子供の家族、そこから去って行くように描かれた家族のシルエット、教師が生徒たちに鳥の画像と地図を比較しながら、環境問題について説いている様子などが、開かれた人間の掌の上に広がっている。
掌というモチーフは、情報と人を象徴するものではないだろうか。情報はまさにわたしたちの手を経て、文字、図像、形態などの様々な、情報を生み出す。さらに、手相はしばしばその人の人生を表すとも言われるように、掌そのものが、その人を物語る情報基地といってもよいだろう。
掌が一色で描かれていないことにも注目したい、これは、まさに健康状態を表しているように思われる。また、掌をぐるりと取り巻くように道が配置され、個性を表すような配色人々のシルエットが描かれており、掌という情報基地が持つ役割を象徴的に表した作品といえる。


2 件のコメント:

  1. 「掌というモチーフは、情報と人を象徴するものではないだろうか。」というとらえ方は、感情的なものというより知的な面での“潜在的属性”レベルでの記述だと思います。事実、すなわち“顕在的属性”レベルでは、バランスを失する大きさで一対の手が描かれている。それが同じ人の手なのか、それとも手と手がつながり、人同士の輪を表しているのかは断定できません。同一人物の一対の手と捉える場合と、異なる人の手と捉える場合で、このイラストから受け取るメッセージがずいぶん異なります。作者はそうした自由度を与えて、どのようなメッセージと受け取るかを見る人に託したのでしょうか。こうした広がりもすべて、鑑賞者が「さまざまな色で描かれた一対の手」という顕在的属性に明確に目を向けたことから始まるものです。絵の中に顕在するものを捉える姿勢は、このようにイマジネーションを膨らませる原点として働くのです。

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  2. コメントしていただきありがとうございます。
    造形・美術教育という視点から鑑賞活動を考えた場合、鑑賞者が作品に感情移入したり、作者の心情を考えて見る。というのが一般的な鑑賞活動の在り方だと捉えていたので、今回のように、作品に顕在する属性から、作品に含まれている情報を読み取るという鑑賞活動は大変、新鮮なものでした。
    子どもたちにとっての鑑賞活動を考えるとき、どうしても、思いを込めて見てほしい。という指導する側の気持ちが先行してしまうのですが、目の前の対象から、情報を読み取る力をはぐくむことも、鑑賞活動において重要な役割であると感じました。

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